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生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan

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井口研究室の教育と研究協力

堅苦しい勉強ではなく,楽しい研究へ,面白くなければ学問じゃない,それが井口研究室の研究教育理念です。

大学研究者や一般研究者の統計データ解析や学術論文作成を積極的に支援し,協力しています。また,国内外の大学生や大学院生に対して,分野を問わず,卒業研究や学位研究も指導・支援しています。さらに,小学生,中学生,高校生であっても,身近な題材をテーマとした科学研究に対し,積極的支援をしています。

最近の情報化社会の進展に対応し,統計データ解析に積極的に協力し,統計ソフト R や SPSS の操作法の指導をおこなっています。直接指導できない遠隔地の学生や社会人には,メールやその添付ファイル(Microsoft Excel, Word,LibreOffice Writer, Calc など)で支援しています。

ここでは,これまでのサポート例をいくつか紹介しておきます。

なお,講演活動やテレビ番組作成協力については,井口研究室の紹介のページに書きました。

支援・協力例

初等中等教育

井口研究室では,新時代の初等中等教育として,科学教育や科学研究支援を行なっています。一例として,岡谷北部中学校の生徒によるアリの行動研究があります。

この研究では,統計データの要約やその表現方法も学んだ上で,論文化して,その結果は,学術誌にも引用されるほど優れたものとなりました。

さらに高校生の例として,私が統計解析を指導した伊藤寛竜さん(東京大学教育学部附属中等教育学校)の卒論では,フリーの統計ソフト R を用いて, 書体の組み合わせを,一般化線形混合モデル(Generalized linear mixed model, GLMM)で分析した研究成果があります。

高等教育

高等教育の一貫として,国内外の大学生や大学院生に対して,分野を問わず,卒業研究や学位研究を支援・指導しています。

大学卒業論文

心理学の卒業研究として,私が統計解析を指導したものに以下の研究例があります。

乾 忠之(2018)
「火」が都市生活者の心身の状態に与える影響について
放送大学 教養学部「心理と教育コース」
平成29年度卒業論文

この研究では,多面的感情状態尺度に,「火」のリラックス効果を示唆する結果が示されました。詳しくは,次のページを参照して下さい。

小泉緑(2018)
思春期の睡眠と大学生の自尊感情について
玉川大学教育学部 平成29年度卒業研究論文

この研究では,大学生の睡眠の質は,社会的スキルとは関連しないが,自尊感情とは有意に関連し,睡眠障害があると自己拒否感が強まることが判明しました。詳しくは,次のページを参照して下さい。

学位論文

最近支援した学位研究として,草間賢介さん(堺市立病院機構・堺市立総合医療センター看護局)と畠山尚文さん(北海道・八雲総合病院リハビリテーション室)の修士研究があります。ともに,医療データを丹念に収集し,綿密な統計解析を行った力作です。

草間賢介(2021)
卒後5年間における看護師の専門職的自律性の変化
―看護師の主体的な継続した学びのために―
大阪教育大学大学院教育学研究科
健康科学専攻 人間科学コース 発達人間学分野

この修士研究を再構成した論文が以下のものです。

草間賢介・石橋正浩(2023)
看護師の経験年数と専門学歴が専門職的自律性に与える影響
大阪教育大学紀要.総合教育科学 71: 217-229

畠山さんの修士研究をまとめた論文は以下のものです。

畠山尚文・井出訓 (2021)
「誤嚥を起こさないための食事介助」における知識尺度の作成
言語聴覚研究 18巻1号

早稲田大学大学院・日本語教育研究科において,2020年に博士号を授与された李 羽喆さんの博士論文でも,統計データ解析に協力しました。学習者が獲得した語彙を表現につなげるための方略について,データに基づく丹念な実験と考察が行なわれました。

李 羽喆(2020)
『日本語教育における産出的語彙学習を実現する教育的枠組み---中国の大学日本語専攻生の語彙学習の改善を事例に』

その根幹となる学術論文の一つが,以下のものです。

李 羽喆(2018)
中国の日本語専攻大学生における語彙学習の実態調査 語彙学習方略の視点から
専門日本語教育研究, 20, 35-42.

李さんは,現在,マカオ大学 人文学部 日本研究センターの Teaching Fellow を務め,日本語教育を専門としています。ています。 LI Yuzhe web site も参照してください。

ほたる祭りで全国的に有名な長野県辰野町ですが,一方で,そこにおける外来種ホタル移入と生物多様性破壊の問題については,海外にも知られるようになりました。 Ellen Haugan さん(ノルウェー・オスロ大学の院生) が,ホタルと日本文化のかかわりを調査するために来日した時も,私が,この問題について,松尾峡の現地で解説しました(Ellen Haugan さん(ノルウェー・オスロ大),辰野町松尾峡へ)。その結果は,優れた修士論文として,日本語で発表されました。

Ellen B. Haugan (2019)
'Homeplace of the Heart' Fireflies, Tourism and Town-Building in Rural Japan
Master's Thesis of the University of Oslo, Norway.

インド・ハイデラバード English and Foreign Languages University (EFLU) の Sunitha Tumkur さんは,第二言語としての英語(ESL, English as a second language)を学ぶ際に,多様な定型的言語表現(formulaic sequences)の学習によって, 英語会話能力が向上することを, SPSS によるチャンク(chunk)の統計データ解析で明らかにしました。この研究は博士論文にまとめ上げられ,データ解析に関しては,私が全面的に指導しました。現在,彼女は Indian Institute of Management Visakhapatnam の Assistant Professor です(参照ページ: Dr. T Sunitha's Website

Sunitha Tumkur (2019)
Effect of explicit instruction of formulaic sequences on the oral fluency of young ESL learners
Doctor's Thesis of The English and Foreign Languages University, Hyderabad, India.

また,英語教育の博士研究として,私がデータ解析を指導した松崎武志さんは,東京外国語大学から博士号を授与されました。以下に,そのタイトルと学位審査結果のリンクを示しています。

Takeshi Matsuzaki (2016)
Research into the Role of Dialog Recitation in the Foreign Language Classroom: Its Effectiveness in Facilitating Memorization and Formulaic Speech Production
会話ダイアログ暗唱に従事させる外国語指導法が. スピーキング時の定型表現の使用と暗記学習に. 及ぼす影響に関する基礎研究
博士論文概要および審査結果

英語習得において役立つと想定される定型表現(formulaic sequence)の暗唱タスクを大学生に与え,その効果をテストとアンケートで総合的に分析し,統計学的に実証した研究です。特に,ノンパラメトリック検定が有効に利用され,優れた結果を残しました。そのことは,上記の学位審査結果4ページ目で,高い評価を与えられています。

看護研究の統計データ解析に私が関わった例として,河瀬里美さんが,東京医療保健大学大学院において行なった修士研究があります。その成果として,手指を洗浄・消毒後に検出される芽胞形成菌数が,日常生活の納豆摂食頻度に関連することが示唆されました。詳しくは,次のページを参照して下さい。

筑波大学大学院の松延祥平さんによる,「ホヤの尾の吸収に関する研究」に対しても,R を利用した統計データ解析の指導を行い,優れた研究結果を海外の専門誌に発表できました。

Matsunobu S. and Sasakura Y.
Time course for tail regression during metamorphosis of the ascidian Ciona intestinalis
Developmental biology, 405(1), 71-81.

この研究では,回帰直線の傾きの急激な変化をセグメント回帰で捉えています(Fig. 4D)。この回帰分析には,私のコクワガタ3型の論文が参照されています。

Iguchi Y (2013)
Male mandible trimorphism in the stag beetle Dorcus rectus (Coleoptera: Lucanidae)
European Journal of Entomology, 110: 159-163.

さらに,水上聡子さん(アルマス・バイオコスモス研究所)の博士研究テーマであるシティズンシップ教育(Citizenship Education)に対しても,統計解析の支援を行い,優れた研究結果が生まれました。

福井大学大学院工学研究科・システム設計工学専攻
2013年博士論文
協働的学びの場としてのワークショップにおける対話支援の技術に関する研究
水上聡子

シティズンシップ教育は,他者との関わりを通じて主体的に生きる市民による社会構築を目指しています。これは,自然科学とか社会科学とかの学問的枠組みを越え,あらゆる年代・性別の人たちにとって,これからの社会で重要なテーマとなり,地域の生物多様性保全(Biodiversity Conservation)を考える上でも必須の課題となっています。

この研究の概要については,以下のページを参照して下さい。

最近では,水上さんは,ファシリテーター(facilitator)として,環境教育問題の実践的研究に取り組んでおり,そのデータ解析に私も協力しています。以下の論文では,主成分分析(Principal component analysis)が効果的に用いられました。

水上聡子・高橋敬子(2021)
福井県版 「気候変動ミステリー」 を用いた教育プログラムの可能性-シティズンシップ教育における内発的動機づけとコンピテンシーの視点から
環境教育 31(1): 23-32.

大学や医療機関との共同研究

井口研究室では,フリーの統計ソフト R (EZR や R コマンダーも含め)の研究利用を積極的に進めています。特に医療分野における,その活用に関しては,長期にわたり,土浦協同病院の倉持龍彦さんに協力して,以下の著作にまとめました。

倉持龍彦・井口豊 (2020)
“R言語”が導く統計解析の世界
血液浄化とそれを支える基盤技術,織田成人・酒井清孝(編),東京医学社:167-182.

倉持龍彦・對馬栄輝・下井俊典・井口豊・宮田賢宏・大塚紹・大友学・若狭伸尚・村野勇・米津太志・角田恒和 (2018)
統計解析を用いた信頼性の評価 1
医工学治療 30 (2): 73-77.

倉持龍彦・對馬栄輝・下井俊典・井口豊・宮田賢宏・大塚紹・大友学・若狭伸尚・村野勇・米津太志・角田恒和 (2018)
統計解析を用いた信頼性の評価 2
医工学治療 30 (3): 149-155.

倉持さんの一般向け講演会EZRで統計解析を実践しよう!(日本臨床工学技士会,2015年,福岡)に際しては,その資料作りにも協力しました。

教育心理学的な観点から,宮崎大学の尾之上高哉さんとは継続的な研究協力を進めていて,その成果は以下のような論文となっています。

尾之上高哉・井口豊 (2020)
ブロック練習と交互練習の単独効果と複合効果の比較検討
—学習内容の定着度,及び,確信度判断の正確性に着目して—
教育心理学研究 68(2): 122-133.

この論文は,日本教育心理学会の 2020 年度優秀論文に選ばれました(宮崎大学教育学部 ニュース 2021.11.29)(第 19 回(2020 年度)優秀論文賞 選考経過および講評)。

尾之上高哉・井口豊(2022)
優秀論文賞を受賞して ブロック練習と交互練習の単独効果と複合効果の比較検討
―学習内容の定着度, 及び, 確信度判断の正確性に着目して―
教育心理学年報 61: 342-343.

尾之上高哉・井口豊・丸野俊一(2017)
目標設定と成績のグラフ化が計算スキルの流暢性の形成に及ぼす効果
教育心理学研究 65(1): 132-144.

尾之上高哉・林原有佳・宇野宏幸(2015)
文化祭の劇づくりの中での生徒の学びの検討-目標に対する達成度評価を手がかりにして
兵庫教育大学研究紀要 47:153-160.

医療機関研究者への支援

医療機関の臨床データ解析にも多数協力しており,その一部として,以下のような例があります。

瀧原純・浅川育世 (2023)
内側開大式高位脛骨骨切り術後患者の術後半年の活動性と歩行速度に影響する因子の検討
理学療法学 50(1): 1-8.

これは,内側楔状開大式高位脛骨骨切り術の術後に,膝関節伸展筋力が活動性と歩行速度の両方に影響することを明らかにした研究成果です。

池田裕貴・松浦汰一・林忠輝・本田哲三(2023)
大腿内側部へのキネシオテーピングと大腿部加圧装具が股関節内転機能および歩行機能に即時的効果を与えた一閉鎖神経障害例
理学療法科学 38(1): 84-89.

この論文は,池田裕貴さん(飯田病院リハビリテーション科,長野県飯田市)たちが,股関節内転筋上キネシオテーピングと大腿部加圧装具装着により,末梢神経障害による筋力低下を改善させた貴重な研究例です。

Sekita, J., Takahira, N., Iwamura, G., Watanabe, H., Kusaba, A. and Kondo, S. (2021)
A Predictive Model for Hip Abductor Strength and Knee Extensor Strength 12 Months After Total Hip Arthroplasty With an Interaction Term
BMC Musculoskelet Disord 22: 827

この論文は,関田惇也さん(北里大学 医療系研究科)たちが,人工股関節全置換術後の筋力回復過程における身体活動量による影響を調べた研究であり,一般化線型モデル(GLM, Generalized linear model)を使い,正規分布とガンマ分布の場合を比較して,影響因子を解明しました。

Gomi, S. (2019)
Short‐term insomnia and common cold: A cross‐sectional study
Journal of General and Family Medicine 2019;00:1–7. https://doi.org/10.1002/jgf2.278

この研究では,五味志文さん(長野県諏訪市 五味医院 院長)が,不眠は風邪の主要症状であることを R によるデータ解析によって明らかにしました。さらに五味さんは,普通の風邪とインフルエンザの臨床的差異にも,不眠の発症が関連することを明らかにしました。

Gomi, S. (2022)
Accuracy of short-term insomnia onset and composite clinical score in the differential diagnosis of common cold and influenza: A cross-sectional study
Kawasaki Medical Journal 48:01-08

この研究では,主成分分析で求めた複合臨床スコア(発熱日基準)を利用し,普通の風邪に対してインフルエンザである確率が,発熱日(0 day)に関して対称的な逆 U 字関係(釣鐘状の変化)になる,という研究です。不眠でも,同様な関係が認められました。

五味志文(2022)
2 型糖尿病患者における経口セマグルチドの使用経験
—筋肉量と脂肪量の変化の検討—
Progress in Medicine 42(8): 77-82.

経口セマグルチドの投与によって,筋肉量,HbA1c,体重,脂肪量がどのように変化するのか,時間を追ってデータを収集し,一般化線型混合モデル(ガンマ分布) GLMM gamma family で分析した研究です。その結果,筋肉量を減らさずに脂肪量を減少させ,高齢者にも有効であることが示唆されました。

小熊一豪・久保定徳・野津史彦・白石廣照・矢野剛司・相原成昭・松川正明・熊谷一秀(2017)
Helicobacter pylori 除菌前後における消化器症状の検討
Progress of Digestive Endoscopy, 91(1): 52-56.

この研究では,ピロリ菌の除去による胃症状の改善状態が観察され,そのデータが統計分析されました。その結果,対象となった胃痛,胃もたれ,胸やけ,膨満感,食欲不振,げっぷ,胃酸逆流,吐き気の全てにおいて,有意に症状が改善していました。詳しくは,次のページを参照して下さい。

愛知学院大学歯学部の嶋崎義浩さんらによる,歯の数と医療費および入院日数との関係の研究では, Tweedie 分布に基づく一般化線形モデル(Generalized Linear Model, GLM) を推奨し,それによる分析が論文となりました。

Saito, M., Shimazaki, Y., Nonoyama, T., & Tadokoro, Y. (2019)
Associations of number of teeth with medical costs and hospitalization duration in an older Japanese population
Geriatrics & Gerontology International 19(4): 335-341.

大学研究者への支援

大学教育に関して,私が統計解析を指導した例に,以下のものがあります。

多賀三江子(2017)
初級日本語クラスでの「個人化作文」における自己開示の深さの分析
-「支持的風土」の醸成を知るために-
早稲田日本語教育実践研究 5: 21-37.

詳しくは,次のページを参照して下さい。

これは,二項検定と Benjamini and Hochberg 多重比較法によって,親しい友人と過ごしているような「支持的風土」の特徴として,レベル3が相対的に多く出現することを明らかにしました

一般研究者への支援

大学関係者だけでなく,一般研究者の統計モデル構築やデータ解析,およびそれらに基づく論文作成の支援もしています。

例えば,島田英泰さん(緑生環,神奈川県相模原市)の樹木保全研究では,多くの貴重な写真情報が掲載され,統計分析にアロメトリー(allometry)と Tamhane-Dunnett 多重検定が効果的に使われました。

島田英泰・細野哲央(2023)
樹幹上部の枝葉を保持する剪定方法がシラカシ(Quercus myrsinifolia)の成長に及ぼす影響:樹冠を縮小する剪定方法との比較
樹木医学研究 27 (1): 1-12.

また,大嶌巌さん(水資源を考える会)の兵庫県・加古川水系の流量変化の研究は,非常に貴重なデータをもたらしました。

大嶌 巌
加古川流域での水資源開発に伴う河川の流況と海域へ流入する河川流量の変化
流域圏学会誌,7 (1): 2-10 .

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