高校卒論「目立つ書体の組み合わせとは」一般化線形混合モデルを使って
東京大学教育学部附属中等教育学校
平成 30 年度卒業研究論文
目立つ書体の組み合わせとは
伊藤寛竜
指導教員 今田健蔵
私が統計データ解析を指導した伊藤寛竜さん(東京大学教育学部附属中等教育学校)の高校卒論の別刷りが届いた。私も謝辞を頂き,改めて嬉しい。
タイトルは,「目立つ書体の組み合わせとは」である。
A 4 サイズ 44 ページの力作で,先行研究にも,きちんと論及している。
書体を区別しようとする視線の動きを調べるため,ディスプレイ上に, 15 個の同じ書体の単語(ディストラクタ)と 1 個の異なる書体の単語(ターゲット)を配置した。中高生の男女計 5 人に,これらの単語を短時間見せた後,ある書体の単語を提示し,それが前述の 16 個の単語の中にあったかどうか,Yes,No で回答してもらい,その正答率を調べた。
使用した書体とフォントは,以下の5書体6フォントである。
明朝体(源ノ明朝)
ゴシック体(源ノ角ゴシック)
丸ゴシック体(FOT-スーラ Pro)
筆書体(HGS 教科書体)
筆書体(HGS 正楷書体-PRO)
デザイン書体(HGS 創英角ポップ)
統計データ解析には,Rを使い,一般化線形混合モデル GLMM で分析してもらった。従属変数は,正解・不正解の二値データ(すなわち,二項変数),独立変数は書体の組み合わせ,変量効果として個人差を考えた。
結果として,ターゲット(ゴシック)・ディストラクタ(筆書)など,正答率が高い,すなわち誘目性が高い書体の組み合わせが浮かび上がってきた。逆に言えば,ディストラクタに依存せず,絶対的に目立つ書体は無いのであった。
調査対象人数が少なく,書体およびフォントの組み合わせも限定されていたとは言え,実に,興味深い結果である。
高校生が統計ソフト R を使い,一般化線形混合モデルでデータ処理を行い,その結果で卒論を書いたということも興味深い。パソコンが発達し,高校生以下でも,ちょっと教えれば自由に操れる人が増えてきた証拠であろう。