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生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
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ゲンジボタルの形態的二型: 群馬と山梨の比較

井口豊(生物科学研究所,長野県岡谷市)
最終更新: 2024 年 7 月 16 日

Male Morphological Dimorphism in the Genji Firefly Nipponoluciola cruciata in Central Japan

Yutaka Iguchi
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
Last Updated: July 16, 2024

1. はじめに

ゲンジボタルの発光パターンが東西で異なることは良く知られている(大場,1988)。しかし,形態の地理的変異は認められないとされてきた(大場,2001)。

しかし,今坂(2010, 2012)は,ゲンジボタル雄の形態計測の結果,地理的な変異を示唆している。

そこで改めて,今坂(2010, 2012)の形態データを多変量解析し,その特徴を探索した論文。

Iguchi Y. (2024)
Male Morphological Dimorphism in the Genji Firefly Nipponoluciola cruciata in Central Japan
Advances in Entomology, 12: 203-209.
DOI: 10.4236/ae.2024.123016

ここでは,関東山地を挟んで,群馬県と山梨県のデータを比較した。ゲンジボタルの属名が, Luciola から Nipponoluciola に変更されていることに注意してほしい。

2. アロメトリック分析とクラスター分析

体長と体幅のアロメトリック分析の結果を図 2 に,雄性器の計測値のクラスター分析の結果を図 3 に示す。

ゲンジボタル雄のアロメトリー

図 2. 群馬県と山梨県におけるゲンジボタル雄の体長・体幅アロメトリー

ゲンジボタル雄の性器のクラスター

図 3. 群馬県と山梨県におけるゲンジボタル雄の性器の計測値クラスター

アロメトリー分析の結果,山梨の雄個体群のほうが,群馬に比べて幅広い形態であることが分かった。さらに,性器のクラスター分析の結果,両県の雄個体群の形態的特徴が明確に二つのクラスターに分類されることが示された。

これらは,中新世 11 Ma 頃の関東山地の隆起に伴って分化したと推定された。

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参考文献

今坂正一(2010)ゲンジボタルの地域変異について.第 1 報.鹿児島県~群馬県までの 12 地点の変異の計測結果.陸生ホタル生態研究会調査月報 24: 1-18.

今坂正一(2012)ゲンジボタルの地域変異について2.第 2 報.2010 年~2011 年に採集された宮崎県~群馬県までの 11 地点の計測結果.陸生ホタル生態研究会調査月報 39: 1-16.

大場信義(1988)ゲンジボタル.文一総合出版.

大場信義(2001)ゲンジボタルの形態と発光パターンの地理的変異.横須賀市博物館研究報告 (自然), 48, 45-89.

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