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生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
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長野と箱根のヒメボタル: 大型小型の違い

井口豊(生物科学研究所,長野県岡谷市)
最終更新: 2024 年 1 月 29 日

ヒメボタル(Luciola parvula)の雄には、大型小型の二型があることは,これまでにも数十年にわたって知られていた(大場 1986, 三石 2010, 草桶ほか 2022 参照)。

しかし,長野県内と箱根周辺のヒメボタル雄のアロメトリーを調べると,どうやら異なるパターンとなることが判明した(Iguchi, 2023, 2024)。それが,以下の図 1 である。

Iguchi Y. (2023)
Allometric approach to the two male morphs in the Japanese firefly Luciola parvula.
Frontiers in Insect Science, 3, 1230363.

Iguchi Y (2024)
Geographic Differences in Allometric Patterns of Males of the Japanese Firefly Luciola parvula.
Advances in Entomology, 12: 18-23.

ヒメボタルのアロメトリーの違い

図 1. 長野県内と箱根周辺のヒメボタルのアロメトリーの違い

アロメトリー式の計算には,統計ソフト R パッケージの smatr を利用し, SMA (Standardised major axis, 標準主軸) 回帰 が用いられた。計測部位の違いも反映しているかもしれないが,アロメトリーの地域差の可能性もある。

これまで,本種の遺伝学的な研究は,単純にサイズの大小で分けて論じられてきた(Iguchi 2023, 2024)。しかし,アロメトリックパターンの違いにも注目すると,新たな遺伝子レベルでの違いも明らかになるかもしれない。

関連ページ

参考文献

草桶秀夫・女川博義・宮原真樹・米沢正美・三田村佳政 (2022) 小型と大型ヒメボタルの生息分布と遺伝的特性.全国ホタル研究会誌 55: 23-29.

三石暉弥 (2010) 長野県におけるヒメボタル2型の分布.昆虫と自然 45: 11-14.

大場信義 (1986) ホタルのコミュニケーション.東海大学出版会,東京.

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