長野と箱根のヒメボタル: 大型小型の違い
井口豊(生物科学研究所,長野県岡谷市)
最終更新: 2024 年 6 月 20 日
ヒメボタル Luciola parvula の雄には、大型小型の二型があることは,これまでにも数十年にわたって知られていた(大場 1986, 三石 2010, 草桶ほか 2022 参照)。
しかし,長野県内と箱根周辺のヒメボタル雄のアロメトリーを調べると,どうやら異なるパターンとなることが判明した(Iguchi, 2023, 2024)。それが,以下の図 1 である。
Iguchi Y. (2023)
Allometric approach to the two male morphs in the Japanese firefly Luciola parvula.
Frontiers in Insect Science, 3, 1230363.
Iguchi Y (2024)
Geographic Differences in Allometric Patterns of Males of the Japanese Firefly Luciola parvula.
Advances in Entomology, 12: 18-23.
アロメトリー式の計算には,統計ソフト R パッケージの smatr を利用し, SMA (Standardised major axis, 標準主軸) 回帰 が用いられた。計測部位の違いも反映しているかもしれないが,アロメトリーの地域差の可能性もある。
これまで,本種の遺伝学的な研究は,単純にサイズの大小で分けて論じられてきた(Iguchi 2023, 2024)。しかし,アロメトリックパターンの違いにも注目すると,新たな遺伝子レベルでの違いも明らかになるかもしれない。
さらに,ゲンジボタル Nipponoluciola cruciata についても,群馬県と山梨県の間で,アロメトリーによる形態的二型が明らかになってきた。
関連ページ
参考文献
草桶秀夫・女川博義・宮原真樹・米沢正美・三田村佳政 (2022) 小型と大型ヒメボタルの生息分布と遺伝的特性.全国ホタル研究会誌 55: 23-29.
三石暉弥 (2010) 長野県におけるヒメボタル2型の分布.昆虫と自然 45: 11-14.
大場信義 (1986) ホタルのコミュニケーション.東海大学出版会,東京.