生物科学研究所研究報告
2018年11月2日
岡谷市役所と活断層 糸魚川-静岡構造線
井口豊(生物科学研究所)
2016 年の熊本地震で,少なくとも5市町の庁舎が被害を受け,業務に支障をきたしたという(朝日新聞 4月23日,毎日新聞 4月16 日,日経新聞 4 月23日など)。
本来,防災拠点となるべき庁舎が地震で被害を受けることは,極力避けなければならないはずであるが,布田川・日奈久の活断層が確認されていた熊本県でも,それが避けられなかった。
同様な状況は,本州中部を縦断する第一級の活断層・糸魚川-静岡構造線が存在する長野県岡谷市でも,十分想定される。
岡谷市役所の旧庁舎は,現庁舎から東へ約100mの塚間川左岸(東岸)にあり,1986年まで市役所として使われていた。現庁舎が建設される以前から,既に,市役所近くに活断層が推定されていて,例えば,岡谷断層発掘調査研究グループ(1984)の図2には,それが描かれていた。
それにも関わらず,なぜか,現庁舎は活断層の近く,ほぼ直上に,移転建設された。
市庁舎だけでなく,保健センターも活断層のすぐそばに建設された。 下の写真は,保健センター裏側(西側)の断層崖(矢印)を塚間川から見た写真であり,実際は坂道なのだが,このように見ると,まるで壁のようである。
写真の奥に見えるのは,岡谷市民病院であり,市役所や保健センターとの高度差が分かる。
ここの北北西,約 300m 地点,敬念寺の裏側で,2012 年にトレンチ発掘調査が行われ,実際に活断層が確認された(岡谷市で発見された糸魚川-静岡線に関連する活断層:岡谷市役所-敬念寺断層)。それにも関わらず,市役所および保健センターの建物と活断層の関わりについて,市役所は特に公表していない。
活断層だらけの諏訪盆地に生活するなら,ある程度の被災は覚悟が必要なのだろうが,それにしても,公共施設や教育施設に対する活断層対策が軽視されているのが岡谷市の現状である。
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参考文献
岡谷断層発掘調査研究グループ(1984)糸静線活断層系のトレンチ調査(岡谷地区,1983).地震予知連会報,32: 363-372. PDF