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生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
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生物科学研究所研究報告
2018年12月3日

長野県岡谷市の塩嶺西山地域における断層と地すべり地形:日本活断層学会2013年度大会

井口豊(生物科学研究所)

日本活断層学会 2013 年度秋季学術大会が,11 月 29-30 日に,つくば国際会議場で開催され,私も発表してきた。全体の発表予稿集は,日本活断層学会のウェブサイトから入手できる.

下の写真は,会場1階の入り口付近。

日本活断層学会2013年大会の入り口(つくば国際会議場)

30日には,シンポジウム「活断層とは何か-その本質とリスク」が開催。

シンポジウム「活断層とは何か-その本質とリスク」の様子

このシンポジウムだけに参加した人も何人かいたが,それでも,もっと多くの人に見てもらいたかった。ただし下の写真は,シンポジウム開始前の様子。

シンポジウム開始前の様子

ポスター発表での質疑応答は活発だった。

矢印が,私の発表:
長野県岡谷市の塩嶺西山地域における断層と地すべり地形
日本活断層学会2013年度秋季学術大会講演予稿集: 60-61.

日本活断層学会2013年度秋季学術大会ポスター発表

岡谷市看護専門学校付近の断層の野外調査データも含まれる。「岡谷市看護専門学校(旧塩嶺病院)直下の活断層」にも書いたが,同病院のまさに直下に,活断層の存在が指摘されていて,今回の調査でも,その周辺に,多くの断層や地すべり地形の実態が浮き上がってきた。そこに,新たに看護学校が建設されたのである(。

質問者から,「問題は,その活動性(活動度)だ」と指摘された。しかし,こればかりは,トレンチ調査のような精密な調査をしないと分からない。

岡谷市議会・平成 25 年第 1 回定例会でも,この断層に関して調査の必要の有無が議員から質問されたが,市役所側の答弁は,「調査しても活断層を特定するのは難しい,直ちに大きな危険性を判断するのは難しい」というものだった(活断層・「塩嶺断層」の調査に対する岡谷市の姿勢)。

いかにも,面倒臭い,といったニュアンスが感じられる答弁である。新設の教育機関として,このような状態で良いのだろうかと,はなはだ疑問であある。

ポスター発表で興味深かったのは,予稿集 p66-67(発表番号P-9):
仏念寺山断層帯に現れた断層露頭とその破砕特性 (中川康一)
であった。

大阪府豊中市で,活断層の真上にマンションは危険だとして,住民が提訴した(日本経済新聞,2011/8/26)断層の研究である。現場に立ち入って調査ができなかったというが,「もし断層が活動した場合には、地表に脆性破壊による大きな段差が生ずる可能性を示唆している」,という中川氏の指摘があるだけに,精査してほしい問題である。これも,面倒なことには関わりたくない,という当事者の気持ちの表れと言えそうである。

活断層学会で発表したついでに,同じ「つくば」にある,産総研の地質標本館を見学してきた。岡谷市の敬念寺の裏で活断層が発見されたトレンチ調査を別のページで紹介した(岡谷市で発見された糸魚川-静岡線に関連する活断層:岡谷市役所-敬念寺断層)。その活断層の剥ぎ取り標本が,この地質標本間に展示されている。

つくば市,地質標本館にある岡谷断層の剥ぎ取り標本

地質標本館にある岡谷断層の剥ぎ取り標本

つくば市,地質標本館にあ岡谷断層の発掘断面図

岡谷断層の発掘断面図

つくば市,地質標本館にある岡谷断層の剥ぎ取り標本

岡谷断層が1000~2000年ごとに活動した証拠