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生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
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生物科学研究所研究報告
2018年10月29日

ドラマ神の舌を持つ男・殺しは蛍が見ていた,辰野町がモデル

井口豊(生物科学研究所)

2016 年 7 月 8 日にテレビ放送された TBS ドラマ・神の舌を持つ男,第1話「殺しは蛍が見ていた」の中で,メインテーマとなった外来種ホタルの生態について,私が監修をした。番組終わりの字幕に,「ホタル生態協力 生物科学研究所 井口豊」と出ている。

監修依頼があった当初は,ニュースか情報番組かと思ったが,ドラマと聞いて,びっくり!製作者の人たちは,本当に詳しく聞いて勉強するので,さらにびっくり!内容を巡って,番組製作者と私の間で,何度もやり取りがあった。

ドラマ中盤(30分ころ)に,木村文乃が「昔から町にいるホタルを保護してるかのように書かれているが,県外で買ったホタルを放している」と言うセリフは,もちろん,辰野町をモデルにしている「事実」である。

さらに同じ場面で,「どうかしているのは確かですが,刑事ではありません」と言う佐藤二朗のバックの研究発表,1960年代に観光目的で~と書かれているが,これも外来種ホタル養殖の町は辰野町のことである。

同じ場面で,「町長が公共事業にしているホタル!」と木村文乃が言う場面で,バックになっている研究発表は,SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)の八戸北高が,COP10関連イベントで発表した研究成果がモデルとなっている。

ドラマ最後に,石倉三郎(町長の役)らが,外来種ホタルの養殖で観光客を集めるのを止めてみようと考える場面は,今までのドラマでは,なかなか見られなかったシーンである。これも時代の要請と言える。

現在の松尾峡ホタルが,県外から買ってきたり,譲られたりした外来種ゲンジボタルであることは,歴史的にも遺伝的にも明らかになっている(長野県辰野のホタル再考:観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの)。辰野町は事実上,これを観光客に隠して,ホタル観光収入を得ている。この「事実」を,読売・朝日・毎日新聞などに伝えて,記事にもなった。,すると後日,辰野役場の庁舎内で,ホタル保護担当の課長補佐(当時)から,「なんで新聞社に言うんだ!!」と,私は怒鳴られた。

ドラマ同様,それほどまでに,外来種ホタル観光事業を隠してやりたい,という辰野町の考え方を,私は実感している。

ドラマ終盤,51分ごろ,旅館・上屋敷の主人(菅原大吉)が,町長(石倉三郎)に言う。「地元のホタル(在来種)も,よそ者ホタル(外来種)も,客には全然関係ない,ただホタルが多ければ客は喜ぶんだ」。辰野町役場で,まさに私が聞いた言葉である。

なお,ドラマ36分ころに出てくる湯西川のホタルを守る会の建物は,第8回信州ホタル保護連絡会が開かれた松本市島内の公民館に似ている。

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