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生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
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生物科学研究所研究報告
2023 年 4 月 4 日

白馬村の天然記念物「神城断層」:2014年長野県神城断層地震の痕跡

井口豊(生物科学研究所)

Kamishiro fault designated as a natural monument of Hakuba village

Yutaka Iguchi (Laboratory of Biology)

2014 年 11 月 22 日長野県北部で発生した M 6.7 の地震では,糸魚川-静岡構造線系の活断層「神城断層」に沿って,白馬村を中心に大きな被害が出た。

その地震よって生じた撓曲構造の一つが, 2015 年 3 月 5 日に,白馬村の天然記念物「神城断層」に指定された(白馬村行政ホームページ,白馬村指定文化財)。

しかしながら,この行政ページには,その断層の位置図が掲載されていないので,その位置が分かりづらい。しかも,これが白馬村天然記念物だということ自体が,あまり知られていない。

白馬村,城山の西側,共和工業(株)の敷地を通過するように,その天然記念物の断層がある。

神城断層地震から 3 年経た 2017 年 10 月 11 日に,白馬村における地形と植生の現状を,私は調査した(井口,2017)。そのとき,天然記念物「神城断層」は,次の写真のように,ビニールシートで覆われていたが,撓曲構造がそのまま残され保存されていた。写真奥に見えるのが城山であり,城山の南西側から北東に向かって撮影されたものである。東側が隆起した神城断層の活動状況が残されている。

白馬村天然記念物,神城断層(城山の西側,共和工業(株)の敷地内)

Google マップの航空写真でも,この天然記念物「神城断層」の所在がよくわかる。

日本活断層学会 2017 年度秋季大会で,岡田(2017)は,日本各地で活断層観察施設が充実していくことの重要性を強調した。その後,共和工業(株)の北側,道向かいの畑に,説明掲示板が設置された。

白馬村天然記念物,神城断層の説明掲示板)

信州大学と白馬・小谷の両村は,神城断層地震の災害記録を後世に伝えるために,神城断層地震震災アーカイブの構築を進めており,その中で,震災遺構の看板設置に取り組んでいる(横山ほか,2023)。これが単なる震災の説明にとどまらず,震災の経験を伝える教育や人材育成に貢献することが期待される。

ウィキペディアの神城断層の項目にも,天然記念物「神城断層」の場所の記述がなかったので,役場ホームページのリンク先とともに,追記した(2018年3月4日(日)08:13,Iguchi-Y)。

白馬村大出の神城断層沿いの倒木の特徴が統計学的に調べられ,平坦面では断層崖に直交する方向から左寄りに倒れている傾向があり,左横ずれ断層運動の影響を受けていると推定された(井口,2018a)。ただし,前述の城山の北西斜面では,左横ずれではあるが,木は右寄りに倒れる傾向があり,当然ながら地形の影響も大きい(井口,2018b)。

Google Earth の画像を見ると, 2014 年の地震以前から撓曲構造が認められた地点に,地震による地表断層が現れたケースがあり,白馬村飯田でもそれが認められた(井口,2019)。

参考文献

井口豊 (2017) 2014年長野県神城断層地震後の地形と植生の変化. 日本活断層学会2017年度秋季学術大会講演予稿集: 102-103.

井口豊 (2018a) 2014 年長野県北部地震における神城断層沿いの森林被害の特徴. 日本地理学会発表要旨集 93: 231. (2018 年度日本地理学会春季学術大会)

井口豊 (2018b) 長野県白馬村北城における神城断層地震後の地形と植生の変化. 日本活断層学会2018年度秋季学術大会講演予稿集: 78-79.

井口豊 (2019) Google Earth を利用した神城断層地震の地表変動の解析. 日本地理学会発表要旨集 95: 276(2019 年度日本地理学会春季学術大会).

岡田篤正 (2017) 活断層資料の集中的な保管・収集に向けた資料館の必要性. 日本活断層学会2017年度秋季学術大会講演予稿集: 34-35.

下田力・大塚勉・佐藤翔・加藤祐輝 (2016) 長野県白馬村における神城断層の地形を利用した歴史遺構. 信州大学環境科学年報 38: 79-88.

横山俊一・内山琴絵・廣内大助 (2023) 神城断層地震震災アーカイブと連携した看板の設置について. 日本地理学会発表要旨集 103: 264(2023 年日本地理学会春季学術大会).

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