生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
母比率の差の信頼区間と多重比較: 季節性胃潰瘍について
井口豊(生物科学研究所,長野県岡谷市)
最終更新: 2022 年 12 月 6 日
1. はじめに
母比率の差の検定の多重比較を,その信頼区間から調べてみる。統計ソフト Rを使い, Bonferroni 補正した信頼区間を算出した。 R では主に,パッケージ multcomp または pairwiseCI が使われるが,ここでは後者を利用した。
対象としたデータは,勝見康平ほか(1993) p.458, Table 2 に示された胃潰瘍発生率の季節変化である。年間データを 3 月~ 5 月,6 月~ 8 月, 9 月~ 11 月,12 月~ 2 月の 4 群に分けて,その発生率を多重比較した結果, 3 月~ 5 月と12 月~ 2 月の間に有意差が認められた,というものである。その差の信頼区間については,示されていない。
2. 胃潰瘍発生率の季節変化
まず 4 期に分けたデータをグラフ化してみる。
#############
library(ggplot2)
nt<- c(3045, 3218, 3149, 3150)
nu<- c(171, 164, 139, 127)
prop<- nu/nt * 100
months<- factor(c(
"Mar_May", "Jun_Aug", "Sep_Nov", "Dec_Feb"
), levels = c(
"Mar_May", "Jun_Aug", "Sep_Nov", "Dec_Feb"
)
)
n<- sum(nt) + sum(nu)
df<- data.frame(
nt, nu, prop, months
)
df
g<-ggplot(df,
aes(x = months, y = prop, fill = months)
) +
geom_bar(stat="identity", width = 0.5) +
labs(
title = "Seasonal variation in the frequency
of gastric ulcer",
x = "Months",
y = "Proportion of gastric ulcer (%)
in endoscopic examination"
) +
theme(legend.position = "none") +
coord_cartesian(ylim = c(0, 6)) +
scale_y_continuous(breaks=seq(0, 6, 2))
plot(g)
################
結果は,次の図 1 のとおりである。
図 1. 胃潰瘍発生率の季節変化
次に,これら 4 群の Bonferroni 多重比較補正した信頼区間を求めて図示してみる。
#############
# Data
library(pairwiseCI)
df$nu<- as.integer(df$nu)
df$no.nu<- as.integer(df$nt - df$nu)
df
# Bonferroni 補正信頼区間の計算
mod.pci<-pairwiseCI(
cbind(nu, no.nu) ~ months,
data = df,
method="Prop.diff",
CImethod="CC",
conf.level = 1 - 0.05/6
)
# 信頼区間グラフ
par(mar = c(3, 9, 6, 4))
plot(
print(mod.pci),
main = "Difference in proportion of gastric ulcer
with 95% confidence interval
adjusted by Bonferroni method",
xlab = "Difference in proportion of gastric ulcer"
)
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結果は,次の図 2 のとおりである。
図 2. 胃潰瘍発生率 3 か月単位の 4 群間の差 Bonferroni 補正信頼区間
12 月~ 2 月 と 3 月~ 5 月の胃潰瘍発生率の差の信頼区間が 0 をまたいでいないので,有意であることが分かる。
参考文献
勝見康平・伊藤誠・岩田章裕・鈴村裕・片岡洋望・竹島彰彦・池戸昌秋・坂義満・伊藤龍雄・岸本明比古・加藤實・中沢貴宏・武内俊彦(1993) 消化性潰よう発生の季節性に関する検討. 日本消化器内視鏡学会雑誌 35(3): 457-462.