logo
生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
Home

長野県諏訪地域における縄文時代アズキ種子の形態変異

井口豊(生物科学研究所,長野県岡谷市)
最終更新:2025 年 12 月 9 日

縄文時代から現在へ,アズキ種子の大きさと形状変化

井口豊(2025)
長野県諏訪地域における縄文時代のアズキ種子形態の再分析
長野県考古学会誌 167号, 85–90

諏訪地域の縄文時代の遺跡から出土したアズキ種子の計測データを多変量解析して,その変異および現生栽培種との関連性を探った研究である。

対象となった遺跡は,花上寺(岡谷市 湊小坂),目切(岡谷市 長地),大横道上(原村 払沢),南尾根(原村 払沢)の各遺跡であり,比較した現生栽培アズキは,岡谷市と宮崎県椎葉村から得られた。いずれのデータも既に公表されたものを利用している。各遺跡の位置は,このページ下の図 1 に示した。

主成分分析やクラスター分析など多変量解析の結果は,縄文時代のアズキを全体的に見ると,長さが変化せず,幅が変化する傾向が認められた。

しかしながら,大横道上遺跡のアズキ種子では,幅も長さも大きくなる変異が見られ,さらに幅が大きくなると,現生栽培種の形態につながることが示された。大横道上遺跡のアズキ種子の形態は,宮崎県椎葉村の現生栽培アズキに近いことも判明した。

目切遺跡出土のアズキ種子は,形状が異なる 2 種類のアズキ種子が利用されていたことも判明した。

これまで,縄文時代およびそれ以降のアズキ種子の大きさに注目した研究が多かったが,形態変化の研究も,さらに今後の進展が期待される。

長野県考古学会誌も,この 167 号から,査読制が導入され,抜き刷りが PDF 化され,厳格化,現代化が進んだ。さらに,本号に掲載された旧石器・縄文早期に関する 5 編の特集論文に関しても,いずれも興味深いものだ。

図 1. 目切,花上寺,南尾根,大横道上の各遺跡の位置(地図上,左上から右下の順).それぞれの赤色バルーンをクリックすると,遺跡名を確認できる.

関連サイト

Home