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生物科学研究所 井口研究室
Laboratory of Biology, Okaya, Nagano, Japan
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変化点分析セグメント回帰で樹木剪定強度の限界を探る

Keywords
Regression Analysis, Crown Removal Limit, Tree Growth, Pretreatment, Abrupt Change

井口豊(生物科学研究所,長野県岡谷市)
最終更新: 2024 年 3 月 6 日

1. はじめに

樹木の剪定を行う際に,樹勢 (tree vigor) に影響が少ない樹冠 (crown) の剪定強度(剪定の割合)はどの程度か,という問題がある。それに関して,しばしば引用される文献が, O'Hara (1991) である(関連文献は,末尾に一括掲載)。それによれば,樹冠 1/3 (33%) までは大丈夫だとされている。

ところが実際にその文献を読んでみると,どうやってその限界 1/3 (33%) という数値が算出されたのか書かれていない。それにも関わらず, 1/3 (33%) limit という限界値がそのまま引用されてきた。

そこで改めて,彼の論文の表に記載された数値を利用して,変化点分析の一種であるセグメント回帰 (segmented regression) を利用して,剪定強度が樹勢に与える影響を分析したのが今回の論文である。

Iguchi, Y. (2024)
Change Point Analysis to Detect the Effect of Pruning Severity on Tree Growth
Open Journal of Forestry, 14: 67-73.

その結果は,以下の図 1 に示される。

樹木の剪定強度と成長反応

図 1. 樹木の剪定強度と成長反応のセグメント回帰分析

結論として, 25% に剪定強度が与える有意な変化点が見いだされたのである。すなわち 1/3 (33%) 限界という数値は,やや過大評価であった。

変化点分析としてのセグメント回帰は,まだまだ日本の研究者では利用が少ない感じであるが,私が統計解析をサポートした松延祥平さんの修士研究(当時),ホヤの尾の吸収に関する研究 (Matsunobu and Sasakura, 2015) に対しても,セグメント回帰が有効であった。

私のコクワガタ 3 型分類の研究 (Iguchi, 2013) でも,セグメント回帰が有効に利用された。

なお,本研究の重回帰分析では,欠損値補完に多重代入法 (multiple imputation) が使われた。

樹木剪定に関しては,私も統計解析で協力した島田英泰さん(緑生環,神奈川県相模原市)の興味深い研究がある(Shimada, 2023)。樹高を切り下げ,樹冠全体を縮小させる crown reduction よりも,主幹を保持したまま下部を剪定し,樹高を切り下げない crown raising のほうが,安定した樹勢が得られるという研究報告である。

関連サイト

参考文献

Iguchi Y. (2013)
Male mandible trimorphism in the stag beetle Dorcus rectus (Coleoptera: Lucanidae)
European Journal of Entomology, 110: 159-163.

Matsunobu S. and Sasakura Y. (2015)
Time course for tail regression during metamorphosis of the ascidian Ciona intestinalis
Developmental biology, 405(1): 71-81.

Shimada, H. (2023)
Effects of Pruning Types on Tree Vigor of Bamboo-Leaf Oak Inferred from Allometric Analysis
American Journal of Plant Sciences: 14, 1430-1438.

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